波乱の時代 特別版―サブプライム問題を語る - 和書 - アマゾン(Amazon)ジャパンのあまっちゃ!
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評価を落としたマエストロの言い訳
(2009-01-03)
市場から絶大な評価を受けたマエストロだがサブプライム問題で味噌をつけた。
この本はそれに対する反論の本である。
やはり頭がいいので肉を切らせて骨を断つ敵な自己弁護を繰り返している。
自分にも落ち度があったと認めながらも本当の致命的なミスは他社に責任転嫁しているところなど、不良債権処理をミスした大蔵省の官僚や政治家の自己弁護と似ている。
サブプライムを防げなかったことは彼の決定的な評価になるだろう。
金融機関は百年に一度の事態が起これば、破綻するリスクをとることを好んでいる(p.46)
(2008-12-30)
サブプライムが原因になっていなければ、他の金融商品か市場で問題が発生していたろう、というあたりがキモ。問題は世界的にリスクが割安に振れすぎていて、トリプルCのジャンク債がアメリカの国債の利回りを4%しか上回っていなくなっていた、などであると(02年の段階ではこの差は23ポイントあったそうです)。リスクがここまで割安に振れすぎれば、いずれ、リスクを回避しようとする人間本来の性格と衝突するようになり、危機が起きるのは必然だった、と(p.39)。
ベアー・スターンズの救済に関しては、FRBは金融システムの崩壊か、最終的には政府が債権者を保護してくれるというモラルハザードが崩れるという地獄に通じるふたつの道のうちひとつを選ばざるを得なかったとしていますが、こうした措置はめったに行わないようにしなければならない、と珍しく断定的に語っており、リーマン・ブラザースの破綻が示唆されているように感じます。経営困難に陥っても必ず政府の支援が得られるようになると《本来の信用力だけで判断された場合よりも低い金利で資金を調達できるようになる》(p.46)からダメなのだ、と。
しかし、リーマンショックの後でも、今後十年間はアメリカの長期金利が上昇し、アメリカ国債の利回りが10%をうかがう展開になる、という予想は早くも破綻寸前のように感じます(p.57)。個人的には資産運用にアメリカ国債も考えようとは思いましたが。
★グリーンスパン v.s. ソロスの思想を理解する一冊
(2008-11-23)
本書は2008年春に米国出版された『ソロスは警告する』に対して、その直後にグリーンスパンがこれをかなり意識して反論を含めて出版した、というのが真相ではないだろうか?(『ソロスは警告する』のなかで、ソロスは住宅バブルの責任をグリーンスパンに帰している。また、エコノミストとしてのグリーンスパンは尊敬しながらも、金融当局者としては市場原理主義や自由放任主義に偏っていたと批判している。)
一方、グリーンスパンは本書で本編(上下二巻)同様、市場主義経済や規制緩和による経済の効率性を掲げて基本的な信条は一歩も譲らない姿勢を見せると共に、今回の金融危機に始まる世界的な恐慌の様相に対しては、100年から50年に一度あるかないかの不可避な事態であるとの諦めや、ある種容認とも取れる考えを述べているように思う。また、その原因は市場関係者のリスク管理の甘さや、人間の構造的欠陥とし、極めて稀な事態に通常から備えておくことの経済的不合理性にも言及して過去を弁護している。(最近の米国議会の公聴会では判断の誤りを認めたと伝えられているが、本心なのかどうか?)
もっとも、後から結果だけを見て過去のグリーンスパンの行為の責任を追及するのはフェアではない。また、グリーンスパンの主張するようにショックを吸収する柔軟性と流動性を今後の組織に求める点は異論ないし、行き過ぎた規制強化の有害性も同意するが、果たして前代未聞の今回の危機が従来の延長線的な対応策で回避出来得るのかどうかは定かでない。今後はプレーヤーである市場関係者も、規制を行う当局側も、相応の学習効果を発揮すべきと思うが、当面する社会的危機に対しては、激痛を一時的に緩和するモルヒネ療法や、場合によっては緊急大手術が必要となってくる気がする。杞憂に終わることを願う。例、国際的なモラトリアム、住宅の一部国営化、私有権の制限、etc.
いずれにせよ、78歳のソロスは今回の危機は『ひとつの時代の終わり』と表現し、82歳のグリーンスパンは『危機解決後の世界は経済面で現在とは大きく違っている』と予想している。少なくとも現状からの大きな変化を予想している点は共通しており、そのような激動の時代をどう乗り切るか、世界の両巨頭の意見に我々は十分に耳を傾ける価値があるだろう。
訳者のフォローが笑える
(2008-11-23)
私は経済に関して無知ですが、この本の執筆後におこったリーマン破綻による大混乱のため、訳者が文中の楽観的なところを無理やりフォローしているのが笑えました。
この小冊子だけでも読む価値があります
(2008-11-13)
はじめにお断りしておきますが、私は先に出版されている「波乱の時代」の上下巻の分厚い方は読んでいません。邪道かもしれませんが、しかし、より新しい情報に基づくこの「特別版」という小冊子だけでも十分読みがいがありました。もちろん、「波乱の時代」の上下巻を読んでからの方が理解は深まるかもしれませんが、そちらを読んでいないとわからないのではないか思ってこちらも敬遠されている方がいるとしたら、そのような心配をされる必要はないということはお伝えできます。
以前は神様のように言われていたグリンスパーンですが、今やあちこちから非難を浴びているのはご存じの通りです。本書も、後半はバブルを招いた責任者という批判に対する反論のように読めます。しかし、それでもやっぱり、グリーンスパンが今の世界経済の混乱をどのように見ているのかについては知る価値があるな、と思いました。しかも、FRB議長時代の発言よりもずっと、わかりやすく語っています。ページ数は少ないけれど、525円。"Newsweek"よりちょっと高く、"東洋経済"よりちょっと安いという価格帯です。
世界経済の混乱の様子が日々変わる状況を考慮すると、このような本は鮮度も非常に重要です。だから、改訂増補部分だけをこのような形で抜き出して追加出版するというのは、良いアイディアだと思います。また、これだけなら、あっという間に読めます。
